みなさんはヴェニスと聞いてどんな街をイメージしますか?

コバルトブルーの地中海に抱かれ、運河を渡るゴンドラから舟歌が響いてくる。私たちの世界のリアルから遠く隔たった都市…?

16世紀のイギリスに生きたシェイクスピアにとっても、ヴェニスは遠い異国の地だったはず。どうしてシェイクスピアはヴェニスを舞台に選んだのか? そんな問いに少しでも答えるべく、第2回はシェイクスピアの「言葉」を手がかりに、16世紀ヴェニスの地図を描いてみましょう。

『ヴェニスの商人』は最初このセリフから始まります。

アントーニオ
「この憂鬱のせいで私はご覧のとおり腑抜け同然、自分で自分が分からなくなってひと苦労だ。」

アントーニオのようなやり手の商人が、「憂鬱」に襲われる原因は、16世紀ヴェニスの貿易が落ち目にあったからかもしれません。

15世紀まで、ヴェニスは地中海の覇者と言われており、富の集積地でした。その繁栄を支えていたのは、遠隔地との奢侈品貿易(スパイスや絹など)です。しかし16世紀には、ヴェニスの遠隔地貿易は利益をあげなくなります。

主な理由として、1. 地中海で海賊船が横行していたこと、2. 商船がコストのかさみ、安全性に欠ける旧来のガレー船(図1)であったこと、3. 顧客だったイギリス、フランスの経済圏が独立したこと、が挙げられます。

(図1) 中世ヨーロッパで使われていたガレー船

16世紀のある商人の勘定書によれば、ショウガ、グローヴ、絹などの遠隔貿易で915ダカットの損失が出ていることがわかっています。

ヴェニスはそれから、近距離での日用品貿易にビジネスを転換していきます。

アントーニオは地中海の水面に遊ぶ美しい陽光を眺めながら、自分の商船を襲う荒波と幾多の危険に思いを馳せていたに違いありません。

そんな貿易の都ヴェニスは、海外から多くの人が集う国際都市でもありました。

『ヴェニスの商人』でアントーニオとならぶ主人公・シャイロックはユダヤ人でした。彼の生きたヴェニスはどんな世界だったのか?

異邦人シャイロックから見たヴェニスにも、今後注目していきます。 (つづく)

文責 カクシンハン文芸 原子耕

※本文中の引用は、松岡和子先生訳『ヴェニスの商人』、ちくま文庫より。
※参考文献は、永井三明『ヴェネツィアの歴史』、刀水書房、2004年。

2018.10.29 Mon.


カクシンハンPOCKET09

「ヴェニスの商人」

2018年

1128日 (水)〜122日 (日)

原宿VACANT
(渋谷区神宮前3-20-13)

演出:木村龍之介

翻訳:松岡和子

作:シェイクスピア

出演:

河内大和

真以美

岩崎MARK雄大

(以上、カクシンハン)

佐野眞介(ミュージカル座)

石毛翔弥(スターダストプロモーション)

鈴木真之介(PAPALUWA/さいたまネクスト・シアター)

白倉裕二

室岡佑哉(仕事)

David John Taylor

一般自由席4,200円 + 1 drink

U22チケット3,000円 + 1 drink

(全席自由・税込)

チケットは

10月7日(日)より発売中です。