今回は、『ヴェニスの商人』でポーシャとジェシカを演じる真以美さんへのインタビューです!このページの上部にも載っている、本作のメインビジュアルでも印象的な真以美さん。『ヴェニスの商人』の魅力や、この作品世界を生きる女性たちの姿について伺いました!



真以美「二人の女性が先を切り拓き、世の中を颯爽と歩いていくようなステージにできたらと思います」


―― 『ヴェニスの商人』という作品について、稽古が進む中、いまどんなことを感じていますか?

 これまでカクシンハンでは悲劇、喜劇とカラーのはっきりしたシェイクスピア作品を上演してきました。前回は『冬物語』で初めてのロマンス劇を上演して、色々な発見があって。続く今回の『ヴェニスの商人』は、一般的に喜劇と呼ばれるけれど、単純に喜劇とは呼べない一面を持っていて、また新鮮さを感じながら稽古に取り組んでいます。

 どのシェイクスピア作品にも見られる陰と陽の部分、それが『ヴェニスの商人』では特に不思議なバランスで共存しているんです。この作品が日本で多くの人に知られているのは、きっと独自の魅力が詰まっているから。稽古ではその一つひとつを丁寧に解明しています。全貌は公演を見てのお楽しみ。

 カクシンハンの作品はよく「大胆」「斬新」と言われていますが、変わっているものを創ろうと意図しているわけではなくて。常にシェイクスピア作品に正統に向き合い、王道として創作を行い、お客様にお届けしています。

―― 今回の『ヴェニスの商人』でも、最初はメンバーでじっくりと戯曲そのものを読み込み、資料を集めて考察を重ねるワークショップが日々行われていました。本作ではタイトルにもあるヴェニスの他に、架空の都市ベルモントが登場するのが特徴的ですね。

 ヴェニスは現実に存在する都市で、この作品の中でも多様な人種や個性を持った人々が生きています。そんな人たちが架空の都市ベルモントに憧れてやってくるのですが、そこに住む富豪の娘・ポーシャが執り行っている「結婚のための箱選び」に翻弄される。金、銀、鉛、どの箱を選ぶか?というポーシャからの問いかけを通して、彼らがそれぞれの宗教、神、あるいは自分の信じるものと向き合うことになるのも面白いところです。

―― 3つの箱選びや裁判のシーンでよく知られるポーシャ。どんな人物なのでしょうか?

 これまで『ヴェニスの商人』の上演を観たり、戯曲を読んだりしてもあまり感じてこなかったことですが、いまポーシャという女性を生きてみて、ポーシャには父親の影が強く影響しているということが一つ大きな発見でした。箱選びや、バサーニオに愛を打ち明けるロマンチックなシーンでも、ポーシャの言葉には頻繁に「取引」の概念が出てきます。そこには「金、銀、鉛の三つの箱に仕込まれた運試し、お父様がこれとお決めになった箱を選んだ人がお嬢様を選び取る」としたポーシャの父親の影響があるんですね。

―― ベルモントからヴェニスへと場面を移し、ポーシャはヴェニスの男性たちが陥っている混迷した状況を大胆かつ軽やかにさばいていきます。カクシンハンの『ヴェニスの商人』においては、そんなポーシャのファッションにも特徴が見られますね。

 ポーシャは自立した考えを持った女性。たとえば「ロミオとジュリエット」のジュリエットや「ハムレット」のオフィーリア、「リア王」のコーディリアといったシェイクスピア作品の代表的な女性たちと比べると、ポーシャの意志はよりストレートに描かれています。ポーシャは自分が着たい服や、逆にこれは嫌、ということについてとても敏感に反応して、素直にそれを実行できる女性だと思うんです。今回のポーシャの装いにも、それが表れていると思います。



―― カクシンハン作品においていつも王妃から妖精、道化まで様々な組み合わせの二役、三役…を多彩に演じ分ける真以美さん。今回もポーシャとジェシカという作中の主要な女性二人を演じます。この両人物を生きることで見えてきたものはありますか?

 ポーシャはその自立した生き方や、チャーミングだけれど大胆不敵な行動力で、ひとつ先を行く存在。現代にも通じる女性像だと思います。だからこそ、あっけらかんと爽やかでありたい。

 ジェシカもまたポーシャと同様に、自分の意志をしっかりと持った存在なんです。それにジェシカはきっとポーシャに憧れを抱いて、影響を受けるんじゃないかな?と…。この二人の女性が先を切り拓き、世の中を颯爽と歩いていくようなステージにできたらと思います。

―― 最後にお客様にメッセージをお願いします!

 『ヴェニスの商人』は、シェイクスピアの最新作!という感じがします。現代的で、新しくって。誰もが楽しめる魅力的な作品になるはず。ぜひたくさんの方に観ていただけたらと思っています!

―― ありがとうございました!

2018.11.26 Mon.

真以美(まいみ)

カクシンハン旗揚げ公演から全17作品に主演女優として出演。男役から女役、ヒロインから道化まで、あらゆる役柄を自在に演じるシェイクスピア女優として活躍する。


カクシンハンPOCKET09

「ヴェニスの商人」

2018年

1128日 (水)〜122日 (日)

原宿VACANT
(渋谷区神宮前3-20-13)

演出:木村龍之介

翻訳:松岡和子

作:シェイクスピア

出演:

河内大和

真以美

岩崎MARK雄大

(以上、カクシンハン)

石毛翔弥(スターダストプロモーション)

鈴木真之介(PAPALUWA/さいたまネクスト・シアター)

白倉裕二

室岡佑哉(仕事)

David John Taylor

一般自由席4,200円 + 1 drink

U22チケット3,000円 + 1 drink

(全席自由・税込)

チケットは

10月7日(日)より発売中です。