今回は特別編として、金貸しのユダヤ人・シャイロックを演じる河内大和さんに作品への思いを語っていただきます!
河内「奥にある魂や信仰心といったものは同じなわけだから、人間として、そのときどう手を取り合うかが問題」
―― カクシンハン「ヴェニスの商人」は10月上旬から稽古が行われています。最初はどんなところから始まったのでしょうか?
まず前提として、いま日本で生きている自分たちには、「ヴェニスの商人」の世界を生きるキリスト教徒やユダヤ教徒の状況をほんとの意味で理解できない。その中で、どんな材料や手がかりで、彼らと繋がっていくか、繋がろうと一生懸命になるというところでしょうか。
―― 「ヴェニスの商人」の中で生きる人々と、現代の私たちをつなぐもの。
それは「商人」とか「金貸し」といった職業とは関係なくて、人々の信念や魂のぶつかり合いそのものだと思う。「これが正当だ」と固く信じていることが相手にとっては全くの逆、ということはよくあって、更には、単なる意見の違いよりももっと根深い、「魂」の問題で相反する人たちがいる。そのとき、相手に寄り添って生きる選択をするのか?相手との間に線を引いて離れたまま生きていくのか?あるいはどうしても一緒に生きていかないといけないとき、どう問題を解決するのか?それとも解決せずにおくのか?そういった問いはいつの時代にも通じている。
たとえば、ある白人至上主義の男性に対して黒人男性がハグをしながら「なぜ俺が嫌いなんだ?」と何度も尋ねたら、最後に出てきた答えは「わからない」だった…という話があって。(その先があるんですけど、それはまた改めて。)そういう理由のない/分からない「嫌い」という感情や行為は、いつも世の中に存在している。
裁判中にバサーニオとシャイロックの間で交わされる「気に入らないから殺す、それが人間のすることか?」「憎いから殺したくなる、それが人間ってもんだろ?」という会話も、とても印象深い問答です。人間という動物が抱えるいかんともし難い問題を突きつけられてるようで、今自分が置かれてる状況がどんなものであれ、心のどこかを引っ掻かれる感覚を覚えるのではないでしょうか。
(後編に続く)
2018.11.19 Mon.
河内大和(こうち・やまと)
1978年山口県出身。カクシンハンほか多くの舞台でシェイクスピア作品のタイトルロールを多数演じるほか、現代戯曲を扱ったストレートプレイや身体を駆使したパフォーマンスなど様々なジャンルの舞台で幅広く活躍する。
カクシンハンPOCKET09
「ヴェニスの商人」
2018年
11月28日 (水)〜12月2日 (日)
原宿VACANT
(渋谷区神宮前3-20-13)
演出:木村龍之介
翻訳:松岡和子
作:シェイクスピア
出演:
河内大和
真以美
岩崎MARK雄大
(以上、カクシンハン)
石毛翔弥(スターダストプロモーション)
鈴木真之介(PAPALUWA/さいたまネクスト・シアター)
白倉裕二
室岡佑哉(仕事)
David John Taylor
一般自由席4,200円 + 1 drink
U22チケット3,000円 + 1 drink
(全席自由・税込)
チケットは
10月7日(日)より発売中です。